なぜ死後検査を行うのか?

伝えられなかった最後のことばを、私たちはきくことができるかもしれません

突然訪れたペットの死。

昨日まで元気に走っていたのに、どうして!?あの時私がおやつをあげたからいけなかったのかしら?それとも、他のワンちゃんたちと公園で遊んだのがいけなかったのかしら?

それまで元気だったり、あるいは病気はあったけれどそこまで悪くないように見えたのに、ある日突然ペットが死んでしまうことがあります。この時、飼い主の方の頭に渦巻くのは「なぜ?」という疑問と「何がいけなかったのだろう」という一種の自責の念だと思います。あるいは、「何か変な病気でほかの子にも移ったりしないかしら」と、感染性を心配されるかもしれません。

話すことができない動物たちは、残念ながら自分たちの感じている状態を飼い主に正確に伝えることはできません。突然訪れた死は、飼い主や周りの方たちを不安にし、そしてそのことが、ペットの死を受け入れることをさらに難しくさせることがあります。

ここで、1匹の猫の話をしましょう。

リオはメスの三毛猫で17歳。自由気ままな性格で、お気に入りはちゃぶ台の下。この家に住む幼い子供たちの相手をうまくかわし、平和に暮らしていました。

甲状腺機能の亢進が見られましたがお薬がよく効いていましたし、以前尿結石を経験したけれど現在は食事でうまくコントロールできていました。ところがある日、食欲が落ち体重が目に見えて減ってきました。病院へ行ったところ、超音波検査をして、胃のあたりに腫瘤ができているのが分かりました。さらに2次病院で内視鏡検査と病理検査をやってもらいました。「どうかガンではありませんように!」願いが通じたのか、腫瘤はガンではなく炎症が原因でした。炎症を抑えるお薬が始まると、リオは食欲も戻り、体重が増え始めました。「よかったね!」家族みんなが喜びました。ところが、治療が始まって3週間ほどが過ぎた時のこと。いつものように夕ご飯を終えて、ちゃぶ台の下にいるリオにお薬をあげようとしたら、「あれ!リオが冷たいよ!」子供の1人が叫びました。「リオ、死んでる…」リオは、いつものようにちゃぶ台の下で、いつものように丸くなって眠っているかのように亡くなっていました。

リオはどうして死んだんだろう?お薬、ちゃんと効いていたのに。元気になってきてたのに。ガンだって見つからなかったのに…。

リオの死の原因が知りたくて、この家族は友人である獣医師に死後検査を依頼しました。

そこで分かったことは…。5ミリほどの穴が胃の幽門部で貫通して腹膜炎をおこしているのがみつかりました。穴が開いていたのは、もともと炎症が見つかった腫瘤の部分です。腹膜炎は、穴が開いた部分に限局されていたので、穴が開いたのはごくごく最近だったことが分かります。穴が開いて程なくリオは死んだに違いありません。「あまり苦しまなかったんじゃないかな…」友人の言葉に、この家族は救われた気がしました。「きっと寝ている間に逝っちゃったのかもね。」1週間ほどしてリオの遺灰が家族のもとに届けられました。リオの死の原因がわかり、そして誰のせいでもなかったことが分かり、家族全員が穏やかにリオの死を受け入れられることができました。

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どうして死んでしまったの?この疑問に対する答えを見つけられた時、愛する者の死を、より穏やかな気持ちで受け入れられるようになるでしょう。また、憶測で自分や他人を責めることもなくなります。

死後検査は、突然訪れた死を理解するのに大きな手助けとなります。愛するペットが最後に伝えたくても伝えられなかったことば。そんなことばを聞く作業を、私たちはお手伝いいたします。